DONOVAN エピソード 1

fulmas2007-09-03

1971年春、薄暗い階段をおそるおそる降りて行くと、そこは元スナックバーの名残があった。所謂居抜きの貸し店舗なのだ。兎に角千葉で始めての本格的ロック喫茶なるものがやりたかったのだ。しかしそれにしては狭い、汚い、臭い(駅前なのに汲み取り式便所なのだ)、ナオシは「いいじゃん!ここにしようよ!」といとも簡単に言ってのけた。高所及び閉所恐怖症の俺はためらったが、さんざん探して空き家は無かったし、若さも手伝ってつい「ここで良いか!」とOKしてしまった。後はトントン拍子に事は運んだ。カズオとマサオが音響設備やクーラー、冷蔵庫迄面倒見てくれ、ノリオ、チアキさん、テル等皆が手伝ってくれた。彼らは千葉大近くの喫茶店で知り合ったロック好き仲間で、学生の俺はいつもレコードを持ち歩き、その店でかけてもらっていたのだ。当時吉祥寺の「ビ・バップ」渋谷の「ブラック ホーク」高円寺の「ムーヴィン」等がロック喫茶として話題に上っていた。学校の帰り良く通った。そこで仕入れた情報を元にレコード屋でLPを買い集め、得意げにその店でかけてもらっていた。ところが行き過ぎて嫌われてしまい、仕方なくと言うか、つい口から「自分で店やるから良いよ!」と言ってしまった。もう後には引けず、彼らの後押しもあって、店をやるはめになった。しかし良く考えてみたらコーヒーの立て方も知らないという無謀さ!最初はナオシの友達のミトシが教えながら手伝ってくれた。お昼から夕方迄ナオシが、学校終わってから俺が夜までと2交代性にした。開店は6月の半ばシカゴ初来日の次の日だった。